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遊戯王 にはまってしまったようだ これは 萌を ほうしゅつするしかない▽
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DMパロディにおける、アテムと双六じいさんが初めて出会った時のお話。

アテムと武藤双六@出会い編その4 >> その3 >> その2 >> その1






では小話。

アテムと双六じいちゃん@出会いpart4

 

 湯気の立つ熱々の紅茶を注ぎ直した筈が、今や程よい温度に変わっている。息を吹き掛けて冷まさなくても、問題なく飲めるくらいの温度だ。
「…やれやれ。アテム、スゴロクが困るからちゃんと写真を返さないといけないよ。」
 店主はアテムをたしなめる。
 一杯目の紅茶は飲み終えるのが早かった。いつもなら、おかわりした紅茶もすぐ飲んでしまうのがアテムだ。それなのにカップに紅茶を残したまま、遊戯の写真を抱え込んでいる。
 たしなめられたアテムは、より写真を抱え込んでしまった。鋭い目は変わらない。けれど俯いてしまって、視線の先に店主とスゴロクの姿はない。どうやら写真を離す気がないらしい。
 そんなアテムにスゴロクと店主は顔を見合わせた。そして共に苦笑い。けれどすぐに店主はどこかほっとしたような、優しい目をアテムへ向けた。
「……まぁでも、珍しいな。アテムが一目で気に入るなんて。それは嬉しい。」
 店主は飲み終えて空だった自分のカップに紅茶を注いだ。湯気の立つそれを一口飲み込む。ほっと息を吐いた。
 すぐにカップを置くと、アテムの頭にぽんと手を乗せる。その手はけして咎めるものではない。寧ろ店主が頭を撫でてやっているような、そんな風にも見えた。
「スゴロクに問題だよ。さぁ、何でアテムはまだ小さいくせに一人でこんな風変わりな店に来るのか?
 ははっ!もちろん“風変わり”って良い趣味ってことさ。スゴロクの日本の店と一緒でね。」
 アテムの頭に手を乗せたまま、双六に問うた店主は軽快に笑った。ただ店主の目は軽快な笑い声とは対照的なもののように見えた。
(……何となく分からん事はない。)
 店主の問いに、双六はアテムに視線を落とす。
 双六にはアテムを遊戯と勘違いしていたという事に気付いてから、何となく思っていた事がある。問の真意は店主本人に聞かなければ分からないだろうが、店主の目を見る限りそれがほとんど間違っていない、そんな風に直感した。
 俯いたままのアテムは口をきつく結んだ。店主の問の意味を理解しているのだろうか。アテムの鋭かった瞳が若干揺れた。
「アテムは…ワシと似てるの。遊戯とも似とる。
 似てる似てないで判断する人もいるじゃろうが、そんな人ばかりじゃあない。少なくともワシは違うぞい。
 …どうじゃ、わりと当たっとるじゃろ?」
 双六の言葉にアテムは顔をそちらに、双六に向けた。それに気付いた双六はにっと笑みを浮かべる。
 問に答えた双六は、自分の顔を指差していた。それは黄色人種特有の肌の色を指し示す動作。その意味を理解した店主は小さく笑った。
「うーん、流石スゴロクか。まぁ、その通りだ。
 スゴロクとアテムは似てる。ユウギくんと言ったかな。ユウギくんとアテムも似てる。
 …アテム、お前は似ていないと言ったが似ているよ。まぁ、私とスゴロクは似てなくてもこんなに仲が良いんだ。似てるかなんて事は問題じゃない。アテムもユウギくんと会えたら友達になれるだろうね。」
 店主は自分の褐色の肌とアテムの黄色人種のような肌を見比べた。
 双六がアテムを勘違いしたのは、何も姿だけではない。肌の色、それが自分と、黄色人種の肌色と同じだったから余計に遊戯だと勘違いしてしまったのだ。
 店に来る途中、双六は何人もの人と擦れ違ったが、自分と同じような肌色の人間とはほとんど出会わなかった。夜中で気付かなかっただけかもしれない。けれど少ないのは確かだろう。
 この店主は、スゴロクとも親しいがアテムともだいぶ親しいらしい。おそらくは見た目でなく、中身で判断し接してくれる店主にだからこそアテムは懐いている。
「アテムや、ワシ等も友人じゃぞ!そうじゃ、もし日本に来る事があったら連絡するといい。遊戯とも仲良くなれるはずじゃよ。…そうじゃ。それはアテム、お前にやろう。ほれ、他にもあるんじゃ。欲しけりゃやるぞい。」
 手帳に挟んだ、他の遊戯の写真。それらを全てテーブルの上に並べた。どの写真の遊戯もおもちゃやゲームの傍で満面の笑みを浮かべている。
 双六の顔と並べられた写真とをアテムは交互に見ている。
 双六の言葉にアテムは最初は目を丸くしたが、それが嘘でない事を悟ったらしい。
「嬉しい。…ありがとう、スゴロク。」
 それは小さな呟きだった。けれどそんなに離れていない距離、その言葉はちゃんと耳に届いた。
 ここに来て初めて見られたアテムの満面の笑みは、写真の遊戯に負けず劣らずのものだった。

* * *

 何か思い出したように席を立った店主は、店の方へ姿を消した。だがそれはほんの少しの間で、何やら箱を持って戻ってきた。
「アテム。お前が欲しがってた物、ようやく手に入ったんだ。御代は出世払いにしておいてあげよう。」
 店主が持ってきた物は、アテムが探していた物らしい。アテムの目の前に店主は置いた。
 それなりに大きさはある。箱には何も書いていないから、箱と中身は一緒ではないのかもしれない。
(そういえば…目当ての物がどうと言っておったな。これがそれかの?)
 双六は店主の言葉を思い出していた。アテムが今日この店に来ていた理由。それはこれの為だったらしい。
 アテムは目当ての物と対面出来るからか、嬉しそうな表情を浮かべている。両手で箱を挟んで、どうやら中を早く見たいらしい。
「これ、今見ても良い?」
「あぁもちろん。開けて見ると良い。」
「ありがとう…!」
 箱を開けると、中には金色の翼のような形を象った物が入っている。双六には見た事のない物だった。
 装飾が施され、なかなか豪華なそれ。筒のような物はどうやら腕輪の部分のようだ。アテムは箱からそれを取り出し、腕にはめようとしたが─出来なかった。
 まだ小さい体にそれは大きすぎるらしい。そして大きさに伴ってそれなりに重さもあるらしく、アテムはせっかく取り出したそれをまた置く羽目になってしまった。
「これ重いぜ。…オレにはまだ付けられない。」
「アテムにはまだ無理だよ。ははっ、せめてあと10年くらいはまたないと。」
 口を尖らせるアテムに、思わず店主は笑ってしまった。
 腕輪部分の装飾も細かいが、翼部分の装飾にも力が入っているそれ。だいぶ古い物のように見受けられる。
 それが何なのかは分からないが、双六は興味が沸いたようだった。
「のお、これは一体何なんじゃ?まさかただの腕輪って事はないじゃろ?」
 ただの腕輪にしては、この翼部分の意味がよく分からない。ゲームかとも思案したが、これを使うゲームを双六は知らなかった。
 店主は慎重にそれを箱に戻した。
「これは古代エジプトで行われていたゲームで使っていたものらしい。アテムはこう見えても尊いお人の子孫でね。ご先祖達はこれらでゲームをしていたらしい。…どう使うかは私にも分からないけれどね。
 アテムの家にも同じような物があるんだ。それなのにこの子ときたら……」
「だって家のは触らせてもらえないんだ。…良いだろ、欲しくなったって!」
「別に欲しくなるのは構わんさ。ただなぁ、滅多にある物ではないし、手に入れるのはかなり色々大変だったんだよ。はあ、これは出世払いに期待するしかないな。」
 わざとらしい身振り手振りで話す店主に、双六とアテムは顔を見合わせ、同時に吹き出して笑った。そんな2人につられるように、店主も笑みを浮かべる。
 どうやらアテムはすっかり双六に気を許した事が自分でも予想外らしく、合わせた視線を気恥ずかしそうに一瞬だけ逸らした。
「あ。」
 逸らした目線の先には、アテムのおもちゃ箱がある。毎日とは行かないまでも、アテムはこの店に、この店主に会いに来るのが好きだ。その度に面白いゲームやおもちゃ、気に入った物を遊んだり、時には貰ったりしている。けれど貰った物を持ち帰るではなく、大抵は店主の住まいの方に置かせてもらっていた。
 最初は店主に貰った物や店主と遊ぶために持ってきた物を置かせてもらっていたが、すっかり仲の良くなったアテムは自分の宝物を店主に預けていた。
 そして今アテムの視線の先にその宝物がある。アテムが生まれた時に父親から譲り受けたと聞かされたそれ。
 アテムは店主の腕を引っ張って自分のおもちゃ箱の方を指差した。そして何やら耳打ちをしている。双六には聞こえなかったが、何か言われたらしい店主は目を丸くしていた。「わかった」とだけ言うと席を立ち、アテムのおもちゃ箱から何やら取り出した。それは先程の翼を象った物と同じ金色で、装飾の施された箱だった。
 店主から受け取ったアテムは大事そうにそれを抱えた。が、すぐにそれを双六へ渡した。
「双六はユウギの写真をオレにくれたから。だからこれ、双六にあげる。…オレの宝物なんだ。」
「これは…?見ても良いのかの?」
 こくんと頷いたアテムに、双六は金色の箱の蓋を開けた。中にはいくつものパーツが入っている。─どうやらこれはパズルのようだ。
 箱も金色で細かな装飾や図柄が描かれているが、パーツの一つ一つを取ってみると、それらにも何やら線が描かれている。パズルを完成させなければどんな図柄が描かれているのか、どんな形かすら分からない。
 なかなか組み立て甲斐のありそうな立体パズルだ。興味深い。
 けれど双六は蓋を閉じて、アテムへこれを返した。
「アテム、気持ちだけで十分じゃよ。こんなに立派な物、そんな簡単に貰えんよ。」
 細かな装飾が施された箱とパズル。詳しい材質は分からないが、本物の金も使われていると思われるそれは、写真とはつり合わない。たとえパズルに興味はあっても、流石に双六には受け取る事が出来なかった。
 パズルを返した双六に、アテムは眉を寄せた。
「…友達だから貰って欲しい、スゴロクは貰ってくれない?」
「いや、違うんじゃよアテム。流石にこんなに立派な物をワシは貰えんよ。」
「じゃあ!」
 パズルを双六へ再び渡す。

「そのパズルはユウギにあげる。いつか日本に行ったら、一緒に作るんだ!
 オレはユウギ好きだから、オレの好きな…大切な物をあげたい。」

 どうやらアテムはパズルを受け取るつもりはないらしい。
 何度かパズルの押し付け合いが続いたが、双六は「高価な物」と受け取れないし、アテムは「ユウギに」と押し付ける。
 その攻防は店主を挟んで行われているもので、店主はやれやれといった様子で息を吐いた。
「スゴロク、受け取ってやってくれ。アテムがここまでムキになる事は珍しいんだ。…それにこれはアテムの家に伝わっている物でね。本当にアテムの大事な物なんだよ。」
 押し付け合いの結果、店主の目の前を行ったり来たりしている金色の箱。それを双六側へ寄せた。
「それをこんなに渡したがっているんだ。それにユウギくん、本当に気に入っているようだよ。気持ち、酌んでやってくれよ。」
 アテムの写真を見る目が、普段と違う事に店主は気付いていた。鋭い中に愛おしさを孕む、そんな目。
 何よりアテムの性格はよく知っているつもりだ。普段は聞き分けの良い子ではあるが、一度決めたらそれを曲げる事はしない。パズルはアテムが大事に持っていた物だ。この店主ですらなかなか触らせて貰えなかった覚えがある。それを手放すというアテムの想いは察してやらなければならない。
「……仕方ないのお。アテム、そのパズル受け取っておくよ。日本に帰ったらユウギに渡してやろう。」
 双六は寄せられた金色の箱を受け取った。受け取るつもりはなかったけれど、どうやらそれは意に反してしまうらしい。 
「本当!?ありがとう、スゴロク。」
 嬉しさで笑うアテムに、双六と店主もつられて笑う。
 双六の手の中にある金色の箱が灯りを反射し優しく光った。

* * *

「スゴロク、紅茶淹れ直そうか?それとも別の…あぁ、コーヒーがあるけどどうする?
 アテムは何がいい?」
「そうじゃのお…コーヒー貰っても良いか?」
「オレは紅茶がいい!」
「OK!少し待っていてくれ。」
 アテムという新たな友人との出会い。そして譲り受けた金色のパズル。双六の予感は当たっていたようだ。
 日本に帰ったら、真っ先に遊戯に会うつもりだ。土産話と、遊戯宛のプレゼント。遊戯がどんな顔をしてくれるのか楽しみで仕方ない。
 一先ずエジプトに滞在している間、このかけがえのない友人達と過ごせる時間を大切にしたいと思う双六だった。



アテムと武藤双六@出会い編-END
write:2008.09.10


金色の翼みたいなやつ→古代編デュエルディスク。なぁにそれぇ^q^
エジプト分からないです。知識ない上に調べてないですあーあ/(^o^)\エジプトってヨーロッパ近いしアジアも近いし黄色人種わりといる…?とりあえずアテムの周りには少ないよ設定★rz
出会い編まとめ≫アテムと双六じいさんは昔からの知り合いでした。千年パズルはアテムから貰った物でした。まとめと設定で全て分かるクオリティ\(^o^)/

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