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遊戯王 にはまってしまったようだ これは 萌を ほうしゅつするしかない▽
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DMパロディにおける、アテムと双六じいさんが初めて出会った時のお話。

アテムと武藤双六@出会い編その3 >> その2 >> その1






では小話。

アテムと双六じいちゃん@出会いpart3

 

 店の入り口は閉められ、扉には“CLOSE”の札がかかっている。店内には何の紅茶かは分からないが、甘い香りが漂っていた。この香りは店の奥から漂ってくる物だ。
 店の奥は店主の住まいとなっている。居間にあたる部屋では、双六と遊戯そっくりな子供と店主の3人がテーブルを囲んでいた。甘い香りの元はテーブルの上に置いてある。3つのカップにそれぞれ注がれたそれは、なるほど、店主がもてなした物のようだ。
 湯気が立つ紅茶に息を吹きかけて冷まし、遊戯そっくりのその子供は一口、二口、美味しそうに飲んでいた。
「やあ、まさかスゴロクにまた会える事があるとは思わなかった!探し物も手に入ったし、今日は本当良い日だよ!」
 ははっと豪快な笑顔で話す中年の男性。彼がこの店の店主だ。双六が4年前に出会った時とあまり変わらないように見える。
 この店主のお蔭で双六はさっきまでの状況を打破する事が出来た。

 遊戯と勘違いした子供は、双六に話しかけられた後、言葉を発せない…突然の事にフリーズしてしまったようだった。この子供を前にどうしようかと困っていたところ、すぐに店の奥から懐かしい足音が聞こえた。子供もその足音に聞き覚えがあるようで、双六から足音の方へ視線を移していた。
 足音の主はすぐに現れた。現れたのはこの店の主だ。
 双六の姿を確認するなり喜んだ彼は、まだ営業するはずの時間を切り上げ、急遽店を閉めてしまった。子供は客であったらしく、店主に誘われるまま店の奥へ上がった。そして今、3人で紅茶をよばれている。それが今の状況だ。
 甘い香りの通り、紅茶はとても甘かった。双六は3分の1程飲んでカップを置いたが、子供に目を向ければいつの間にかほとんどカップは空のようだった。おかわりが欲しいらしく、店主にカップを手渡すと、店主は慣れた手付きで紅茶を注いだ。そして砂糖を足す。その子供好みの砂糖の量を把握しているようだ。
 客であるようだし、店主とは前から面識があるらしい。その証拠がその子供の目だ。店主に向ける眼差しは親しげなものだが、双六に向ける眼差しは怪訝なものだ。それも仕方ないと双六は思う。勘違いとは言え、突然話し掛けられては、それも自分と異なる言語で話し掛けられたのだ。幼い子供なら間違えれば泣き出してしまうかもしれない。それを避けられただけマシと思ってもいい。
 店主はその事を知ってか知らずか、2人の間に自然と入っていた。

「もう4年も経つのか。あの時ほどの緊迫した勝負、なかなか味わえたもんじゃない!またもう一勝負お願いしたいね。」
「ワシもお前さんとの勝負、忘れられなくてのお。再戦を望んでいたところじゃ。」
「おお!それなら今すぐにでもお願いしたいところさ!
 アテム、お前の好きなゲーム、この方も強いんだよ。スゴロクと言うんだ。日本人でね、日本ではここのようなゲームショップを開いているらしい。
 ああ、スゴロク。こっちの小さいのはアテム。まだ小さいがゲームが好きでね。よくこの店にも来るんだ。今日もお目当ての物があって来てたんだよ。」
「ほお、ゲームが好きなのか。」

 店主の紹介を受けて頷く子供。アテムという名らしい。
 ゲーム好きとは、孫の遊戯を思い出してしまう。異なるとは認識したが──似ている。
 そういえば、手帳の中に遊戯の写真を挟んでいたのを思い出した。この子に見せたらどんな反応をするのだろうか。もしかしたらこの怪訝な目も変わるかもしれない。
 手帳を取り出し、写真をホテルに置いてきていないか確認する。手帳には選んで持ってきた写真全て挟んだままだった。
 その中でも一番お気に入りの写真を取り出す。我が孫ながら可愛いと思ってしまう、そんな遊戯の姿が捉えられた写真だ。

「アテムというのか。さっきはすまんかった。孫にとても似ていてのお。この写真に写ってるのがワシの孫で遊戯と言うんじゃ。どうじゃ、可愛いじゃろ?」
「ユウギ?ユウギ…」

 双六はアテムと店主にも見えるように写真をテーブルの上へ置いた。アテムは目を大きく開いて写真を見ている。
 店主は店主で驚いた風だった。写真とアテムを交互に見ては「これは似てるなあ」と呟いている。顔はともかく、特徴的なシルエット。それが似ている一番の要素だろう。
 アテムも似ていると思ったのだろうか。瞬きをしては大きく開かれる目に、双六は思わず吹き出してしまった。

「はは、さっきは遊戯と間違えてしまってな。アテムと同じくらいの年かの?今3歳なんじゃ。この子もゲームが好きだから、アテムとは仲良くなれるかもしれんのお。」
「これは驚いたよ、スゴロク。まさかこんなに似てる子がいるとは!アテム、お前も似てると思うだろ?」
「…ううん、全然似てない。でも─」
 アテムはテーブルの上の写真を素早く取ったかと思うと、そのまま写真は自分の物だとでも言うように抱えて、そしてまた口を開いた。
「ユウギは可愛い。オレは好きだ、ユウギ。」

 双六に向けていた怪訝な目はもうない。アテム本来の鋭い目がそこにある。
 ただその目が、本当に好きなんだなと言うのを大人2人に思い知らせていた。

 

write:2008.09.04

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