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遊戯王 にはまってしまったようだ これは 萌を ほうしゅつするしかない▽
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第1話-part3   >> part2 >>part1
「それは水面下で─」

 


 なかなか減らないデザート。グラスに注がれたままの飲み物。
 モクバは好物のデザートを前に、フォークを持ったまま固まっていた。
(ドラ、マ……?)
 ペガサスからは「会食のセッティングをお願いしマース」とただそれだけで、そういえば詳しい内容はまったく聞いていなかった。今までのイメージが先行していたから、またソリッド・ビジョン関連だと思っていたのに。
 フォークを持ったまま、何やらモクバは思案しているように見える。
 乃亜は痛む頭を抱え、テーブルに肘を突いていた。目を閉じ、眉間に皺を寄せている。肘を突いている事に、瀬人は何も言わなかった。
 暫く沈黙するこの場。

「……クックック。ハーッハッハッハッ!」

 最初に口を開いたのは瀬人だった。それも盛大な高笑い。
 嫌な予感と驚きに、乃亜とモクバはぽかんと瀬人を見上げた。既にペガサスの言にはついていけない、寧ろついていく事を拒否している2人であるが、この瀬人の表情と高笑いに何故か冷や汗が流れた。
「瀬人、一体どうし……」
「臆するな乃亜!所詮ソリッド・ビジョン目当てだろうと思っていたが…そうか。デュエリストを増やすため、か。フッ、面白い。」
 嫌な予感は当たるらしい。おそらく、だが。
 自然と乃亜とモクバは目を合わせて、そして同時に溜息を吐きどこか遠くを見つめた。
「ペガサス。貴様のそのプラン、聞いてやらん事もない。内容も考えているんだろう?話せ。」
「に、兄サマ…!」
「流石海馬ボーイデース。プランはこうデース。」
 ついていけない乃亜とモクバを余所目に、ペガサスは片手を上げ新たな書類をMr.クロケッツに用意させた。

“デュエリスト増加プラン:
  デュエリスト成長ドラマ「決闘!~最強の決闘者は誰だ~」
  ストーリー、キャスト概要”

 書類の枚数は10枚程度。先程の書類に比べると少ないそれ。
 書類を受け取るなり、瀬人はすぐにそれを眺め始めた。
 一応乃亜とモクバも眺めはしたが、眉間に皺が寄るばかりだった。

* * *

 書類を手渡してから数分後。
 一通り目を通したらしい瀬人・乃亜・モクバは書類をテーブルの上に置いた。
 その様子を見ると、ペガサスはあるページを開いて見せた。ストーリーの書かれているページだ。
「3日間寝ずに考えまシタ。だいぶ苦労したのデース。」
「……ふぅん。このシナリオを書いたのはペガサス、貴様と言う事だな?」
「もちろんワタシデース。どうデス、完璧でショウ?」
 どうやら自信のあるらしいペガサスは、それこそにっこりと笑顔を作った。
 そんなペガサスと反比例するように、瀬人の後ろには怒りのオーラが沸いて出るような、そんな気配がした。
 大抵こうなったら次の瀬人の行動は読めた物だ。乃亜とモクバは予測したようで、それぞれ耳を塞いだ。
「ふ・ざ・け・る・なー!!こんなシナリオでこのオレが納得する訳がなかろう!!」
 バンとテーブルに手を叩き付け立ち上がった瀬人に、乃亜はもう何も言わなかった。
(瀬人…頼むから物だけは壊さないでくれ……。)
 突然の振動にガチャという音と共に弾んだ食器だが、何とか割れずに止まっていた。ただこのままではいずれ割ってしまう、それほど瀬人の怒りのオーラは凄まじかった。
 モクバは控えている本物のメートル・デ・テルを見付けると、そのまま視線を送った。察してくれたらしい彼は、素早く席へやってきた。「お下げ致します」と手際良く片付けてくれた彼に、モクバは目配せした。
(ありがとう、モクバ…)
(乃亜、割れなくて良かったぜぃ…)
 食器は下げられグラスのみが残ったテーブル。乃亜とモクバはお互い、既に何度目か分からない溜息を吐いていた。
 この2人が溜息を吐いている傍ら、ペガサスは瀬人の怒りの意味がまったく分からない、そんな表情で肩を竦めて首を傾げた。
「Oh?海馬ボーイ、何が気に入らないのデース?」
「貴様…分からないなら分かりやすいように言ってやる。」
 瀬人は額に青筋を立てながら、書類に書かれたシナリオを指差した。
「オレ達やらクラスメイトやら言ってくれたが…このシナリオのどこでそれが必要になる!?それに貴様、デュエルモンスターズの創始者であるにも関わらず主役を演じたいだと?…一体どういう了見だ!
 このままのシナリオならオレは協力などせんわ!かませ犬になってたまるか!」
 瀬人の怒りの矛先は、どうやらペガサスの立てたシナリオに向かっているらしい。
 ペガサスのシナリオを簡単に説明するとこうだ。

“デュエル大会に出場したペガサス。トーナメントでぶつかる強敵と闘うが、ことごとく倒し勝ち上がっていく。見事優勝を手にしたペガサスは、「努力すれば誰でも強くなれるのデース」と負かしてきた強敵を励ましつつ、視聴者にもデュエルの面白さを伝える”

 ここで出てくる強敵が瀬人を始め、瀬人のクラスメイト達。そして乃亜・モクバ、その他デュエリストと、ドラマ上の強敵と言うよりはただペガサスが対戦相手を選んだだけと言うべきだろうか。
 ペガサスがデュエルモンスターズの創始者と言うのは周知の事実で、デュエリストであれば尚更ペガサスを知らない者など存在しない。
 そのペガサスが主役で、尚且つただ勝ち上がるだけのシナリオに瀬人は元より、乃亜・モクバも読んだ瞬間呆れ返っていたのは確かだった。
「創始者の貴様が主役だと?ふん、笑わせてくれる!ただ勝ち上がりたいだけのシナリオなら、相手がオレ達でなくとも問題なかろう!デュエルモンスターズの普及なら、それなりに名の通った役者に頼む事だな。それこそかませ犬に丁度良い役者をな!」
「…ま、瀬人の言う事も分からなくない、か。確かにこれじゃあ陳腐過ぎる。ペガサスが勝ったって、ペガサスを知ってる人が見たらそんなの別に予想通りだろうしさ。それにこれ、視聴率の事まったく考えていないじゃないか。まぁ、打ち切られなければ良い、その程度じゃないかな。」
「オレはとにかくペガサスが主役なのが…悪いけどどうかと思うぜ。だってペガサス大人だろ?兄サマとか遊戯たちならまだ分かるけど…。子供から大人までって言うんだから、キャストもちゃんと考えた方が良いと思うけどな。」
 実際にドラマを行うかはともかく、ペガサスのシナリオ・キャストには3人揃って不満が多すぎた。
 兄弟3人に捲くし立てられたペガサスは、流石に言葉に詰まってしまったようだった。

「……ユー達の考え、よーく分かりまシタ。」
 数分口を閉ざしていたペガサス。
 漸く口を開いて出た言葉は至極静かなものだった。
 結局このインダストリアル・イリュージョン社との業務もこのままお流れになるのかと思ったが、今回のペガサスは一味違うらしい。
「フッフッフ…しかしワタシは諦めまセーン!今回のドラマ化プランは絶対成功させたいのデース!」
「ふん。そんなシナリオで、か?海馬コーポレーションは一切関与しない。そんな下らん物に提携する訳がなかろう!」
「それなら…」
 ペガサスは予め用意してきたシナリオとキャストの書かれた書類を、自ら半分に引き裂いた。
 真っ二つになったそれを躊躇いなく床に投げ捨てる。それらを拾い上げたMr.クロケッツは、丸めて鞄の中へしまいこんだ。
「ワタシのシナリオが気に入らないというのなら…良いでショウ。海馬ボーイ、ユーに全てお任せしマース!もちろんシナリオ、キャスト全てデース!それならどうデス!?日本のデュエリストの為です、ユーが断る理由はないはずデース!」
 ドラマ化プラン、ペガサスは本気らしい。それも今までのソリッド・ビジョン提携の話以上に押しが強い。
 瀬人はペガサスの言に小さく「ふぅん」と呟いた。
「…ペガサス、全てオレに任せる。その言葉に二言はないな?」
「もちろんデース!日本のデュエルモンスターズ普及はこのプランに賭けていマース!」
「フフ、ペガサス。その言葉、確かに受け取った!」
「「…え?」」
 つい数分前まで「提携する訳がない」と言っていたのは聞き間違いだったのか。瀬人の言葉に、思わず乃亜とモクバは瀬人の方へ振り向いていた。
「瀬人…さっき散々馬鹿にしていたじゃないか。」
「ふぅん、それはペガサスのシナリオだったからだ。乃亜、オレは別にプラン自体を否定していた訳ではない。」
「………あぁ、そう。」
 続く言葉を発しようとした乃亜であったが、グラスに手を伸ばし、中に入った飲み物を一口、言葉と共に飲み込んだ。
「兄サマがシナリオ考えるのかぁ……それならオレ、別に反対はしないぜ。
 だって完璧なシナリオとキャスト考えるもんね、兄サマ?」
 何やら思案する素振りを見せたモクバであったが、瀬人を信頼しきっているモクバはドラマ化に納得したようだった。
「あぁ、もちろんだモクバ。やるからには完璧を目指す。
 …少なくともペガサス、貴様に主役の座はない。確実にな。」
「Oh…仕方ありまセーン。とにかくこのドラマ化、提携が可能になるのならワタシは譲歩しマース。
 乃亜ボーイ、アナタはどうデスか?」
「……。社長がやる気になっているんだ、決定権は社長に委ねるよ。」
 ペガサスはこの企画を持ってきた張本人。
 瀬人が企画に乗るというのなら、モクバも乗るのは目に見えている。
 最早乃亜に否定出来る余地は残されていなかった。
「…では、このプランは決定で良いデスね?海馬ボーイ、ユーのシナリオ・キャスト楽しみに待っていマース!ワタシに出来る事なら何でも言って下サーイ。」
 提携に漕ぎ着けた事に、ペガサスは明らかに上機嫌だ。
 その中で乃亜一人、複雑な表情を浮かべていた。

“デュエルモンスターズ普及計画 in Japan”
 海馬コーポレーション、インダストリアル・イリュージョン社提供という形でドラマ化は確定した。
 それは水面下で、けれど着々と計画は進行する様相を呈している。



第1話「それは水面下で─」-END
write:2008.09.12


「もちろんワタシデース」のペガサスたぶんこんなん\/ll^o川\/
ペガサス「海馬ボーイが釣れたのデース\ll^o川/」
デュエルに絡めれば社長は釣れると思います。社長が釣れればモクバは釣れます。こうなれば乃亜も釣れます。釣るなら瀬人、たぶん^^
社長を落とせば仕事はスムーズですね。流石ペガサス名誉会長ll^v^川!
1話終了。次は漸く2話です、頑張れ妄想力^q^

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