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遊戯王 にはまってしまったようだ これは 萌を ほうしゅつするしかない▽
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第1話-part1
「それは水面下で─」

 


 都内某所、PM7:00。とある有名レストラン。そこに瀬人・乃亜・モクバの3人は来ていた。
 他企業との会食や、極々稀にプライベートでも訪れるこのレストラン。海馬コーポレーションの社長・副社長と言う事も相俟って、兄弟達はVIP扱いを受けている。
 しかし普段はお抱えシェフによる料理を邸で、というのが常である。そこまで歳が離れている訳ではないが、小中高と見事に分かれ、尚且つ各々何かしら仕事をしているとなると、兄弟水入らずの時間を取るのはなかなか難しい。その為か、誰が言うでもなく、食事時になると自然に兄弟3人揃うのであった。
 瀬人・乃亜は敢えて口に出す事はなかったが、モクバはたまに「やっぱり家で食べるのが一番好きだぜ」と言葉にしている。その言葉に瀬人は「ふぅん」と言うだけだし、乃亜は「そうだね」とあまり言及しない。ただそれはモクバのように言葉にしていないだけであって、兄弟3人で居られる穏やかな時間、そんな食事の時間を大切にしているのは確かだった。
 それが今日何故レストランへ赴く事になったのか。一番最初に言い出したのは、珍しくもモクバであった。

* * *

「あのさ、今度の木曜外食したいんだけど…もう予定ある?」
 3人揃う夕食の時間。食事も終わり掛けの頃にモクバは話を切り出した。
「珍しいね、モクバがそんな事言うなんて。…ちょっと待って。」
 今度の木曜─と言っても後数日しかない。業務やらシステム開発やら、そして学生生活と毎日何かしら行っている彼等にとって、急に予定を空けるのが困難な時もある。
 乃亜は木曜の予定を思い出そうと、テーブルに肘を突き、そのままいつもの体勢─頬杖を突いた。そんな乃亜を見るなり瀬人の眉間には皺が寄る。
「乃亜、まだ食事中だぞ。頬杖を突くのはやめろ、マナーが悪い。」
「…分かってる。けど仕方ないじゃないか、これが一番頭働くんだから。瀬人は木曜どうするのさ?」
「ふん、オレの返事は既に決まっている。モクバ、オレは行けるぞ。丁度オフだからな。」
「本当!?やった、ありがと兄サマ!」
 ほぼ「行ける」と即答した瀬人に対しては、一先ず安堵した表情をモクバは浮かべた。ただ乃亜は自分の予定とは別の、瀬人の予定を思案した。
(まったく、モクバには甘いな瀬人。……新しいシステムの調整するって言ってなかった?)
 つい先日、瀬人と乃亜の2人でソリッド・ビジョンシステムについての話し合いをした事があった。その際、2人のシステムの差別化をより図るために改良した乃亜のプログラムを、後日検証してから調整すると言ったのが瀬人。思い返せば、「木曜なら検証と調整、共に時間を割けるな」と言ってはいなかっただろうか。
 社長業務と並行してシステム開発やらも行っているから、乃亜とモクバに比べるとより多忙な日々を瀬人は送っている。システム調整なんて事をそんなにすぐ完了出来る訳はないし、調整を持ち越しとなれば他の業務に支障をきたす恐れもあるかもしれない。もっとも、現行のシステムで問題なく動作しているから、システム調整を後回しにしても何ら不都合はないとも言えるのだが。
 乃亜の予定はと言えば、とある企業から共同プログラミング開発についての会合の誘いを受けていた。先方は「御予定に差し支えなければご参加頂きたい」との事で、だいぶ下手に出ているようだった。どうやら乃亜に開発の手助けを求めているらしい。『都合が悪く参加出来なくなった』と伝えれば、一先ず今回の会合不参加は何とかなるだろうか。次回の会合予定も伝えられてはいるから、そちらにこそ参加出来ればほとんど支障はないと乃亜は判断した。
(瀬人が行くのにボクだけ行かないのも、ね。)
 いくらモクバの頼みだからと言っても、わざわざ瀬人は自分の予定を差し置いてまで兄弟の、家族の時間を取ったのだ。それなら乃亜もそちらを、モクバの頼みを聞く側に回るのは当然の事だった。

「あぁ、ボクも特に重要な予定はないみたいだ。大丈夫だよ、モクバ。」
 乃亜は頬杖をやめて姿勢を正すと、まったく問題ないといった表情をモクバと、そして瀬人に向けた。
 その様子を見て内心驚いたのは他でもない瀬人だった。
(乃亜……良いのか?)
 瀬人もある程度乃亜・モクバの予定を把握している。普段は別々の業務を行っているが、社長・副社長という関係上、緊急事態に対処する時など、ある程度予定を把握していなければ支障をきたす恐れがある。
 何より瀬人が乃亜・モクバの保護者的な立場にあるというのが予定を把握している一番の要因だろうか。いくら“副社長”という肩書きを持ち立派に業務をこなしているといっても、やはり中学生と小学生。瀬人がまったく関与していない業務であっても、先方も気を使ってか瀬人に何かしら報告をしてくれる。
 もちろん乃亜が誘いを受けたとある企業からも、日程と簡単な内容説明程度ではあるが瀬人へ伝えられていた。
 兄弟の、家族の時間を優先してしまう瀬人は、モクバの頼みをすぐ承諾してしまったが、何も考えなかったわけではない。システムについては資料を既に纏めてあるようだし、徐々に検証や調整を進めていっても問題はないと判断した。
 しかし乃亜の予定は、瀬人の予定と違って自分だけでどうにかなるものではない。先方あっての会合なのだ。案の定と言うべきか、瀬人と同じくモクバの頼みを承諾している乃亜に視線を投げ掛けようとしたが─止めた。
 瀬人は兄弟に絶対の信頼を置いている。口に出す事は滅多になくともだ。乃亜が自分で判断したのだから、おそらく問題はないのだろう。もし何かしら問題が起きたとしても、乃亜なら脱却出来ると信じている。
(良かったぜい、予定大丈夫みたいで!)
 モクバを見ると、乃亜からも承諾の言葉を得られてほっとした、そして嬉しそうな表情をしている。モクバにしてみれば、急な誘いであるから今回は無理かとも思っていたが、自分でも予想外に承諾を得られて心底安堵したようだった。
 もっともこの兄弟達は、本人達が自覚しているのか無自覚なのかはともかく、兄弟を出来る限り優先してしまう事がほとんどだった。─こうしてモクバの頼みを承諾する流れになるのも予想通りと言えない事はない。

「モクバ、場所と予約はどうするんだ?」
 木曜の外食はほぼ確定のようだ。そうなると次に気になるのは時間と場所だ。
 兄弟が大抵利用するレストランは国内のみならず海外にも名が通っていて、一般人ではなかなか予約が取れないところである。もっとも兄弟達はVIP扱いを受けているから、レストラン側が融通をきかせてくれるのだが。
 ただいくら融通がきくといっても、無理に予約を取るなんて事はしなかった。腕が立つお抱えシェフを有している事だし、敢えてそうする必要もない。無理に予約を取る事になるのなら、モクバが望むように木曜でなくとも構わない、とも瀬人は思った。
 ──しかしそれは杞憂らしい。
「それなら大丈夫、兄サマ!行くところはもう決めてあるんだ!予約も取ってあるし。
 いつものレストランで夜の7時。……勝手に決めたけど、それで良い?」
 既に予約してある辺り、流石と言うべきか。話を切り出したのは急ではあるが、予定を実行するための準備は整っているらしい。
 モクバに必要だったのは、瀬人と乃亜、2人の承諾の言だけだった。
 予約も済んでいるなら尚更行くしかない。夜ならばそれまでの時間に自分のすべき事を行える。
 モクバの言葉に、瀬人と乃亜は同時に頷いていた。



write:2008.09.07


[海馬家の日常その1]の数日後っぽい話から始まる本編1話。1話言うけどpart1であって次のは1話part2と続きます。
纏まらないのはいつもの事。仕 方 な い /(^o^)\
各話タイトルが浮かびません。どうしようもないのでセンスのなさを自重しない感じでつけます。センス売り場はどこですか←
とりあえず邸でのテーブルのつき方は↓だと妄想してみる。536?棚に上げておくと良いと思います^^
    モクバ
瀬┌─────
  |
人└─────
    乃 亜

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