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遊戯王 にはまってしまったようだ これは 萌を ほうしゅつするしかない▽
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第1話-part2   >> part1
「それは水面下で─」

 


 フルコースも出揃い、あとは最後のデザートだけ。
兄弟の好みを熟知しているらしいレストラン側は、兄弟それぞれに異なるデザートを提供した。瀬人と乃亜には甘さを控えたデザート、モクバには甘いデザート。
 食べながら瀬人は、不機嫌さを前面に押し出した表情で静かに口を開いた。

「………で?一体何のようだ─」

 レストランには兄弟3人だけで赴いていた。普段と変わらず兄弟水入らずの時間で穏やかそのものだったのだが。
 デザートを運んできたメートル・ド・テルの姿を見るなり、瀬人の表情はがらりと変わった。
 メートル・ド・テルだと思ったその男。つい先日にも見掛けた、よく知った男だ。

「─ ペガサス。」
「海馬ボーイ、会えて嬉しいデース。」
 インダストリアル・イリュージョン社名誉会長、ペガサス・J・クロフォード。
 やたらとにこやかな笑顔に、瀬人は小さく舌打ちをした。

* * *

「…ま、おかしいとは思ってたんだけど。」
 不機嫌さを隠しもしない瀬人に呆れ顔の乃亜は呟いた。モクバが外食の話を切り出した時に感じた違和感。ペガサス絡みであると分かると一人納得していた。
 デュエルモンスターズの生みの親であるペガサス。海馬コーポレーションのソリッド・ビジョンシステムに興味を抱いているという話は知っている。幾度となくペガサス直々に交渉の話があったくらいだ。
 現在海馬コーポレーションはソリッド・ビジョンを独自で利用している。海馬ランドではデュエルモンスターズをソリッドビジョン化して戦うエリアが密かに公開されている。ただカード情報全てを網羅しているわけではない。権利問題等、何かと厄介事があるのだ。もしインダストリアル・イリュージョン社と提携すれば、今以上にデュエルモンスターズのソリッドビジョン化は容易であるし、お互いメリットはあってもデメリットはないように思える。
 ただ瀬人はペガサスとの交渉を断り続けていた。瀬人の、社長の理由は「必要ない」のたった一言だけだが─乃亜とモクバは違うと確信している。
((瀬人・兄サマ……。
  ペガサスに負けたからって話くらい聞いてくれ!))
 大会で幾度となく好成績を納めてきた瀬人であるが、何故だかペガサスには勝てたためしがない。流石生みの親と言うべきか、戦法も素晴らしいが、見た事のないカードの連続は瀬人の苛立ちを増長させるものだった。
 乃亜とモクバ、副社長にしてみればインダストリアル・イリュージョン社との提携はもちろん光栄な事だと捉えている。しかし社長がまったく認めない。それもおそらくは私情で、だ。
 今回の食事は差し詰めペガサスがモクバに依頼したのだろう。こういった事は乃亜よりモクバの方が瀬人の怒りを買う事無く誘う事が出来る。─筈だった。
「…ペガサス、貴様ぁ!誰の許可を得てこの場にいる!?オレ達はまだ食事中だ、邪魔をするな!」
 乱暴にテーブルに手をつき立ち上がる瀬人。カシャンと食器のぶつかる音が響いた。
 丁度デザートを口に運ぶところだったモクバの手からは、フォークが滑り落ちていた。
「に、兄サマ!」
「ちょっと、瀬人!一応インダストリアル・イリュージョン社の名誉会長に何て事言うんだよ!」
 慌てるモクバ・乃亜を余所目にペガサスは肩を竦めた。けれど表情からは悪びれた様子は微塵も感じられない。それどころか何やら楽しそうにも見える。書類を執事─Mr.クロケッツから受け取った。
「許可ならモクバボーイに取ってありマース。海馬ボーイがあんまりワタシを無視するので、今日の会食のセッティングをお願いしたのデース。
 助かりましたヨ、モクバボーイ。Thank youデース。」
 ペガサスの言葉にモクバの方向へ顔を向ける瀬人。その気配に気付いての事かは分からないが、モクバは瀬人のいる方向とは真逆へ顔を向けた。その時目線だけ一瞬乃亜に向ける。どうやら助けを求めているらしい。
 乃亜は小さく溜息を吐いた。
「会食だと!?もうすぐ食事も終わる。貴様の分などないわ!」
「…瀬人、いい加減落ち着いてくれ!いきなりそんな風に立ち上がるなんてマナーが悪い。モクバだって恐がるじゃないか。
 ペガサス、その書類は?…社長の虫の居所が悪くならないように話してくれ。頼むから。」
 何となく痛むような頭を抱えながら乃亜は言葉を発した。この場を纏められるのはモクバが助けを求める以上、乃亜しかいない。
「Oh!これは乃亜ボーイ、申し訳ないデース。
 …ま、ワタシも遊びで来たわけじゃナイ。お話しまショウ、海馬ボーイ?」
 どうやらペガサスはまともに話し合うつもりで来たらしい。その目は名誉会長としての目だ。
 乃亜の言葉に一応着席をした瀬人だったが、不機嫌さはまったく消えない。それどころか無言で腕を組む瀬人からは妙な威圧感がある。
「兄サマごめん…!ペガサスがどうしてもって言うから、その…」
 目を泳がせ瀬人の方を向けないままぽつぽつ話すモクバに、瀬人は一瞬目を伏せた。
「…ふん。一応話だけは聞いてやる。話せ。」
「流石海馬ボーイ。恩に着マース。」
 腕を組み話す瀬人に気を悪くする事なく、ペガサスは口元ににやりと笑みを浮かべた。
 ペガサスが片手を挙げると、Mr.クロケッツは書類をそれぞれ瀬人・乃亜・モクバに手渡した。
「デュエルモンスターズ、今では多くの国に浸透していマース。それもデュエリストはなかなかの地位を確立されつつもあり、嬉しい限りデース。
 …ただしそれは諸外国での話。日本でもデュエリストは増加しているとはいえ、諸外国に比べると微々足るものデース。」
「…何が言いたい、ペガサス。」
「ワタシは日本にもデュエルモンスターズをより広めたいだけデース。それには海馬ボーイ、ユー達の協力が必要なのデース。書類を見て下サーイ。」
 十数枚の書類には、各国と日本の比較が記載されている。デュエリストの人数から、大会賞金の差など諸々。
 これらのデータは何も初めて見る物ではなかった。何より瀬人自身デュエリストとして大会に参加しているからか、日本人の少なさは肌で感じていた。国内大会の参加人数は増加傾向にあるとは言え、まだまだ認知度の低さは否めない。デュエルモンスターズを取り扱っている店舗の少なさも馴染みの薄い要因だろうか。

 瀬人はクラスメイトを思い出していた。
 実家がゲーム屋の武藤遊戯は、デュエルモンスターズにも敏感に反応している。既にかなりの使い手で、均衡した試合にはいつも心躍る。
 城之内克也は、初心者ながら持ち前の運と度胸で格上の相手から勝利を勝ち取っている。
 獏良了のデッキのえげつなさは、大会でも上位に入れるのではないか。
 デュエリストが増えれば、全体のレベルも底上げされる筈だ。それはデュエリストである瀬人自身、望んでいる事だった。
「ふぅん。…それで、具体的にどう協力しろと言うんだ。」
「フフフ……。その言葉を待っていまシタ!それはこれデース!ワタシのプランに間違いはないデース!」
 書類の一番最後のページをペガサスは提示した。自信満々に提示したそこに書いてあるのはこうだ。
“デュエリスト増加プラン:
  デュエリスト成長ドラマ「決闘!~最強の決闘者は誰だ~」”
「ちなみにタイトルを考えたのはクロケッツデース。決闘と書いてデュエルと読むそうデース。」
「…そんな事はどうでも良い!何だそのデュエリスト成長ドラマと言うのは!?訳が分からん。」
「Oh?分からないデスか?ノンノン。分かりやすく説明してあげマース。」
「ペガサス、まさか……。」
 何となく意味を予想した乃亜は、痛む頭を誤魔化すようにデザートに手を付ける。
 意味が分からないモクバはきょとんとペガサスと瀬人を交互に見た。そして乃亜と同じように結局デザートを食べ始める。
 そんな二人には見向きもせず、ちっちと指を振り、ペガサスは自身有り気に語り始めた。
「海馬ボーイ。ユーのクラスメイトにデュエリストがいるのは分かっていマース。それもなかなか強いと噂に聞いていマース!彼等の写真を見ましたが、ビューティフルボーイ&ガールデース!
 乃亜ボーイ、モクバボーイもビューティフル。海馬ボーイもビューティフル。ここまで言えば分かるデショウ!
 ワタシはユー達にドラマを演じてほしいのデース!きっと子供から大人まで、男女問わず、デュエルモンスターズに興味を持ってくれるに違いありまセーン!」
「「「は?」」」
 ペガサスの言葉に兄弟3人、同時に言葉を失った。
 乃亜はこのドラマプランを、ドラマを通してデュエルモンスターズの認知度を上げる。その為に日本の企業、海馬コーポレーションの協力を頼みたい。その程度だろうと思っていた。
 予想は大体当たってはいる。いるけれど─
「ちょっと待ってくれペガサス!要するにボク等をキャストに立ててドラマを作ると言う事だろ!?そんなの本職の役者にでも頼めばいいじゃないか!」
「ノンノン、乃亜ボーイ。ワタシはリアリティを追求したいのデース!役者かどうかより、デュエリストかどうかが問題なのデース!
 それにユー達、見事にビューティフルボーイ&ガールばかりデース。役者に負けてまセーン!」
 どうやらドラマを作るには本当のデュエリストを起用したいらしいペガサスは、既にドラマのプランも考えているようだ。あまりの本気さに、乃亜はモクバへ視線を送った。
『ボク等にはどうしようもできない』目はそう語っていた。



write:2008.09.10


我が道を行くペガサス。センスのなさは仕様/(^o^)\
瀬人とペガサスは磁石のS極とS極的な関係だと良いな。同じ故に反発。大人になれ!特に瀬人^^^
乃亜とモクバはこういう時は苦労人です。頑張れ副社長^q^
乃亜ボーイ、モクバボーイに対して瀬人は海馬ボーイ。瀬人ボーイだったら自分で書いててたぶん吹く\(^o^)/

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