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遊戯王 にはまってしまったようだ これは 萌を ほうしゅつするしかない▽
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第2話-part1   >> 1話-part1
「春嵐-前夜-

 


 ペガサスとの会食が終わり、解散したのは夜9時半を過ぎた頃だった。
 磯野の運転するリムジンに乗り込んで数分後、規則正しい寝息が聞こえてきた。寝息の主はモクバ。どうやら疲れたらしく、眠ってしまったようだった。
 この会食、結局モクバが話を切り出していなければ成立していない。今までインダストリアル・イリュージョン社、というよりペガサスとの提携話をことごとく断ってきた瀬人を見ているモクバだから、この会食の予定を取り付ける事からペガサス絡みだと分かってしまうまで。もちろん会食の間も気苦労は絶えなかっただろう。
 すっかり眠りの世界に落ちているモクバは、何やら肩の荷が下りたような、そんな安らかな寝顔だった。
「瀬人、コート。」
「あぁ、そうだな。」
 乃亜の言葉に瀬人は自分の着ているコートを脱ぎ、眠っているモクバにそっと掛けた。瀬人とモクバならだいぶ身長差があるから、コートはすっぽりとモクバの体を覆ってしまえる。
 瀬人は腕と足をそれぞれ組んだ。長身故か、そもそもが長い手足だからか。広い車内の中、それは優雅な仕草に見えた。
「乃亜、自分の上着を掛けてはやらないのか?」
 特に表情を変えるでもなく、淡々とした口調で瀬人は言った。
「だってボクのより瀬人の方が……っ…!」
 瀬人の問に乃亜の口からは自然と言葉が漏れていた。が、全て言い切る前に乃亜は言葉を飲み込んだ。
 ただ何も考えずに漏れてしまった言葉に、乃亜はわなわなと身を震わせていた。
 いつもと変わらないと思っていた瀬人の表情。それが実は違う事に気付いたのだ。
「瀬人、お前…!わざと言ったな…!」
「ククッ、煩いぞ乃亜。モクバが起きる。」
 目を伏せ涼しい顔に見える瀬人だが、口角は上がっている。
「……ちっ!」
 一瞬モクバが身動ぎしたから、乃亜は口を塞ぐしかなかった。モクバの事を言われたら、今この場では何も言えない。
 乃亜は何度か深呼吸で気を落ち着かせると、車内から外を見た。
 夜であるのに、都内は光に満ちていた。

* * *

 湯気の立つカップが2つ。片方にはミルク入りコーヒーが、もう片方にはブラックコーヒーが注がれている。邸に着くなり、使用人にコーヒーを淹れるよう頼んでおいたのだ。
 室内を淹れ立てのコーヒーの香りが満たしている。
「……それで?シナリオとキャスト、案はあるのかい?」
 乃亜はカップを手に取った。中に注がれているのはミルク入りコーヒー。それを一口飲み込んだ。
「それなら考えはある。なかなか興味深いしな。」
 広いデスクの上に会食の時に渡された書類、ペガサスが用意した書類が広げてある。その内、キャストの書かれたページを眺めながら、瀬人は乃亜へ返事をした。
 邸に到着した瀬人と乃亜は、すっかり眠っているモクバを起こさないよう、細心の注意を払って部屋へ運んだ。そのすぐ後、今回ペガサスと業務提携する事になった“デュエルモンスターズ普及計画”、このプランを練り上げるために書斎へ赴いていた。
 瀬人と乃亜、それぞれのパソコンには電源が入れられている。
「興味深い?」
「あぁ。これだ。」
 瀬人は書類の内、キャストの書かれたページを指し示した。
 ペガサスの書いたシナリオ、そしてキャスト。シナリオ・キャスト共にこのまま使うつもりは毛頭ない。けれど瀬人が注目したのはキャストの欄だった。
 キャストに選ばれている人の名前。それらを見てみると、見事にデュエリストの名前が羅列している。
 諸外国におけるデュエルモンスターズの知名度の高さは群を抜いていて、更にデュエリストの地位も確立されている。それこそ大会の賞金で生計を立てる者もいるくらいだ。また世界に数枚しかないカードには、価格が付けられない程の物まで存在する。
 しかしそんな諸外国に比べ、日本でのデュエルモンスターズの知名度はまだまだ低い上、普及する為の場所も、カードも足りていない。
 海馬ランドでは密かにソリッド・ビジョンシステムを利用したデュエルモンスターズ専用エリアを公開しているが、稼働率は極めて低い。利用するのは大抵、大会に出場するようなデュエリスト。それもデュエリスト内ではそれなりに名が通った者ばかりだから、一般人の利用数はほぼ0に近いと言える。
 ペガサスがキャストとして選んだデュエリスト。もちろん大会で名を残している者の名前がそのほとんどを占めているのだが、その中にある童実野高校の面々の名前。瀬人にとってこの馴染み深い名前が書かれている事には、正直ペガサスから書類を受け取り、話を聞いた時は内心驚いたものだった。
 瀬人自身は大会に出場し好成績を収めているデュエリストだからともかく、名前の書かれた童実野高校の面々は大会には出場していない。出場したとしても、極々小規模の大会くらいだろうか。
 彼らなりにデュエルモンスターズに親しんでいるのはもちろん知っている瀬人であったが、まさかペガサスが彼らを知っているのは意外だった。
 瀬人はあるファイルを起動させた。それはデュエリストの基本使用デッキ・戦術・大会出場履歴・戦績らのデータで、それによるデュエリストレベルを海馬コーポレーションなりに纏めてあるものだ。
 キャストに書かれた人数とそのデータを照らし合わせてみると、ほとんどのキャストがデュエルデータ内の名前と一致している。
 ただ、童実野高校の面々を除いては、だが。
「瀬人はペガサスのキャストには賛成って事?…いや、上がっている名前には賛成、という事か。」
「あぁ、そうだ。今から送るデータを見てみろ、乃亜。ペガサスめ、ドラマなどと抜かしていたが…本気のデュエルを見たいらしいな。」
 瀬人のパソコンに表示されているデュエルデータと今回ペガサスが指定したキャスト。それらのデータを乃亜のパソコンへ送信した。
 乃亜はそのデータを眺めると、何か思案するよう頬杖を突いた。
「へぇ、流石『リアリティを追求したい』って言っていただけの事はあるね。…ボクとモクバの名前までキャストに上がってるのは意味が分からないけど。」
「分からん事はあるまい。乃亜もモクバも自分のデッキを持っているではないか。」
「持ってはいるさ。けど、瀬人みたいに大舞台でデュエル、なんてした事ないし。」
「…まぁ、今までの戦績など、ペガサスにしてみれば関係ないのだろうな。実力主義、というところか。
 それに乃亜。海馬コーポレーションが提携する以上、上に立つオレ達が出ないでどうする!」
「そんな事言って…どうせ自分がデュエルをしたいんだろ!」
 頬杖を突いたままの乃亜は、怪訝な目を瀬人に向けた。
 その目はぴくりと一瞬動いた瀬人の肩を見逃さなかった。
「…あぁ、そういえば瀬人がいつも負けてるデュエリストの名前あるみたいだね。この前の大会にはいなかったけど…名前何だったかなあ。
 ペガサスも十分私情挟んでいたと思うけど。ははっまさか瀬人、私情なんて挟むわけないよな?完璧なシナリオとキャスト立てるんだろ?モクバ、だいぶ期待しているようだし。」
「……クッ…!口が過ぎるぞ乃亜!オレとペガサスを一緒にする気か!」
「そんなにムキになるって事は、何か心辺りがあるからじゃないか。」
「乃亜!」
 一瞬動いただけの肩だったが、乃亜の言葉にわなわなと震えているようだった。
 そんな瀬人に、乃亜は見えないところで片目を瞑り、舌を出してみせた。



write:2008.09.15


磯野「兄弟仲良くあられて嬉しい限りです(運転中の癒しらしいよ^^)」
乃亜の欲しい物=身長だったら私たぶん猫可愛がりすると思う。可愛すぎる生き物に認定せざるを得ないまじで。と言うか乃亜=可愛い子で認識されつつある。かっこいい中に可愛いさ混じりが理想なのに。自重しろ自分/(^o^)\
社長が着てるコートは初期の普通コートです^^後期コート硬そう^q^
タイトル前夜だからね、明日は嵐が吹き起こる。イヤッホォオウ\(^o^)/
1.5話とかにしたかったが何か纏まらないから2話でいいや^^

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