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DMパロディにおける、バクラの過去振り返り。
※設定※
- DMパロディ設定なので、バクラは初恋のあの子を忘れられずに髪を伸ばしています。
- 長髪暦15年程←
- 千年リングは現段階では持っていません。
- 「宿主ぃ?誰だぁ、ソイツは。」(=まだ獏良を知りません)
では小話。
バクラ@過去編-その1
「此所はいつ着ても暑ぃな。…ったく、髪が邪魔だぜ。」
季節は夏。エジプト。
久し振りに訪れたこの国は、以前と変わらず暑い。
バクラはその長い髪を一つに、いわゆるポニーテールに結っていた。
男にしては、いや女にしてもバクラの髪は長いだろうか。普段は下ろしている背中の中程まである銀色の髪。
下ろしたままだと首元が隠れて暑いらしい。
結んでいる分、首元に風が通り少しは涼しくなるようだった。
「アイツは何で髪なんて伸ばしてたんだろうな。女だからか?…ハッ、女ってのは面倒臭ぇ。」
もう慣れきってしまったが、暑い時はいつも思う。長い髪なんて暑苦しい。邪魔なだけだ、と。
いや、思い返せば寒い時だってそうだ。
髪を洗った後、乾くのには時間が掛るし、ある程度乾かさないと風邪をひく。
最近風邪なんてものをひいた記憶はないが、まだ身体の出来上がっていない頃、バクラはよく風邪をひいたものだった。
それもこれも長い髪がいけない。
しかしバクラは一定の、背中の中程までの長さを小さい頃から保ってきた。
バクラが髪を伸ばし始めたのは、もうだいぶ前のことになる。
* * *
まだ幼い頃。幼稚園に通っていたから3、4才だろうか。
周りの子供は皆親にべったりだった。
誰かが泣けばすぐに周りも泣き出した。
何処かで喧嘩が始まったかと思って見てみれば、内容は玩具の取り合いや遊具を使う順番等々だった。
我ながら早熟な子供だ、とバクラは振り返る。
──幼いながらも思っていた。あまりにもくだらなすぎる。
何故親に甘えるのか分からない。
(少しはテメェで行動しろ。)
何故泣き出すのか分からない。
(別にテメェが泣く意味はない。関係ないだろ。)
何故喧嘩するのか分からない。
(少しは譲り合うとか出来ねぇのか!)
同年代の子供は年相応の幼さかもしれないが、バクラにしてみれば余りにも幼すぎた。
場合によっては一緒に遊ぶ事もあるにはあった。幼いなりにバクラに好意を寄せる子もいたから、「一緒に遊ぼう」と言われることもある。
けれど一緒にいると尚更思う。
(何でこんなにガキなんだ!)
同年代の子供とは、次第に自分から距離を置いた。
しかし精神年齢に伴わない身体は幼いままだから、自分より上の年代の子供とつるむ事もなかなか出来なかった。
何より、自分より少し年上でも、それでもやはり精神的な幼さが気になってしまったのは事実だ。
今なら、多少譲歩して周りに合わせることも出来ない事はない。ただ幼い頃はそれが出来なかった。それどころかただ“くだらない”と馬鹿にしていただけだ。
バクラが何を考えていたのかなど、周りはおそらく知らないだろう。
それでもバクラが距離を置いているのは、幼い子供ですら何となく感じ取っていったから、今まで何かとバクラを誘いに来た子もついには寄り付かなくなった。
そういうところは子供は敏感らしい。
バクラはつまらない物を見るような、そんな目で周りを眺める事が多くなった。
一人でいるのが当たり前になった頃。
多忙な親が迎えに来る時間はいつも閉園ぎりぎりだったから、バクラは一人で家路に着くようになっていた。
いつもの帰り道。住宅地を抜けた先には小さな公園がある。
大して広くないその公園にあるのは、ブランコ、砂場、ジャングルジム、シーソー、滑り台。普通の公園にある遊具が一通り並んではいる、そんな所だった。
それなりに遊具が揃っているにも関わらず、この公園にはあまり子供の姿は見えない。
実は住宅地の中にここより少し広い公園があるのだ。大抵、そちらの公園に子供や親が集まって遊んだり催し事をしたりしているから、この公園に多くの人が集まる事は稀だった。
バクラが通る時間。午後3:00くらいは特に人のいない時間帯だ。おそらく仕事やら迎えに行っている時間やらで、手が空いていないのだろうと想像する。
いつものようにあまり人のいない公園の側を、いつものように通り過ぎようとしたところ、バクラはいつもと違う事に気が付いた。
「…誰だぁ、あれは?」
見慣れない子供が一人、ブランコに座っている。
おそらくはバクラと同じ年齢くらいの子供だ。
ここ一帯の住宅地に住む子供は、大抵バクラの通う幼稚園に通っているから、通っている子供であれば顔くらいは知っている。
しかしその子供の顔はまったく見覚えのないものだった。
多少気になったのは事実だ。だからと言って特に近付く訳でも、話し掛ける訳でもない。
バクラはいつもの調子で公園を通り過ぎようとした。が、突然吹き抜けた風が、木々をざわつかせていた。
「ねぇ、キミはこのへんに住んでるの?」
「…は?」
突然の声に振り返る。振り向いた方向にいるのは、ブランコに座る子供だった。
にこにことよく分からない笑顔のその子供は、とても綺麗な長い髪をしている。
ブランコからひょいと降りると、立ち止まったままのバクラへ近付いてきていた。
「あのね、ボクここにひっこしてくるんだって。それでね、ママが『公園行ってきていいよ』って言ったから、あそびにきたの!」
「………。」
「ボクずっといるんだけど、だれも公園こないの。だからね、一緒にあそぼう?だめ?」
バクラより少し低い身長のその子供は、にこにこと笑ったままだった。バクラに尋ねているようで既に両手を取っているから、どうやらその子供はバクラを逃がす気はないらしい。
今となっては同年代くらいの子供と遊ぶ機会のなくなっていたバクラは、目の前の子供に怪訝な目を向けた。
「手、離せよ。」
「どうして?あそぶの…だめ?ボク、せっかくくるのまってたのに。」
手を振り解こうとしたバクラであったが、それは出来なかった。
手を握ったままのその子は、俯いてしまって今すぐにでも泣き出しそうに、目に涙を浮かべていた。
「…………。ぐすっ。」
「…………おい。ったく分かったよ、遊ぶよ。だから泣くなよ…」
「…本当?あそんでくれる?」
「あぁ、だから手だけ離してくれ。」
「うん!ごめんね!あれでね、あそびたいの!」
仕方なく遊ぶ事を承諾したバクラに、その子供は涙こそ浮かべたままだったが、満面の笑みを浮かべてくれた。
遊んでいる間中、その子は笑顔を絶やさなかった。
ブランコ、滑り台、シーソー。ありきたりの遊具なのに、それこそ本当に楽しそうに遊ぶその子に、バクラは気が抜けたように息を吐いていた。
いつの間にかバクラの表情は優しく緩んでいたのだが、バクラ本人はその事に気付いていないようだった。
「ボク、キミとあそべてうれしいよ。ねぇ、明日もいっしょにあそべる?」
一通り全ての遊具で遊びたいらしいその子は、今度は砂場に直行した。どうやら砂山を作りたいらしく、砂場に置きっ放しだったシャベルを見付けると、それを使って山を作り始めていた。
水を使ってぺたぺたと砂の山の形を整える。しっかり固めないとトンネルを掘る時に崩れてしまうから、その子は一生懸命固めていた。
「明日…いいぜ、別に。」
「ほんとう!?わぁ、うれしいなぁ。えへへ、おともだちだね。ボクうれしいや。」
すんなり承諾の言葉を紡いだ口に、バクラ自身驚きはあったのだが。こんなに優しい笑顔をくれる子と遊べるなら、寧ろ嬉しい言葉だと思った。
「明日はねぇ、おっきい砂のお城つくりたいなぁ。今度はね、ちゃーんとバケツもってくるの!」
「…じゃあオレはシャベル持ってきてやる。」
青が広がっていた空も次第に赤に浸食され始めている。
笑いながら遊ぶ時間の進む速度は、いつものそれとはまったく違っていた。
* * *
「もう…10年以上前、か。」
あの時の子供とは、バクラはそれっきり会っていない。
確かに引っ越してくる予定の人はいたらしいのだが、結局引っ越してこなかったらしい。
約束の日をバクラは今でも覚えている。
幼稚園が終わるや否や、珍しく急いで走っていった。けれどそこはいつも通りのあまり人のいない公園で、昨日の笑顔の子には結局会えなかった。
たった一度しか遊んでいない相手。それでも忘れられないのが何故だか、今なら分かる。
「いつか、会えるのかねぇ…」
柔らかな雰囲気を纏ったあの子に、幼いバクラは惹かれていたようだった。それがはっきり恋だと認識したのはそんなに後の事ではない。
あの時の子供を忘れないように、何となく髪を伸ばし始めてからもう10年以上。今となってはこれが普通で、不便を感じる事はあっても髪を短くしようとは思わなかった。
もし切る事があるとしたら、あの時の子に会えた時か、もしくは忘れた時か。
「…さてと、行くか。」
鞄を背負うと、日差しの照り付けるエジプトの街中へ向かって歩き始めた。
遠くを見渡すと、砂漠の砂が太陽の光を反射し、きらきら輝いていた。
バクラ@過去編その1-END
write:2008.09.13
バクラ幼稚園生時代の話。ゾーク?闇そのもの?なぁにそれぇ^q^
とりあえずDMパロのバクラ闇成分は低めです。たぶん。10年以上忘れられんって凄いよね^^
この話本編にもいずれ関わるかもしれないけど…先が読め過ぎるZE/(^o^)\